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【読書メモ】国宝消滅 デービッド・アトキンソン

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かなりおもしろい本でした。

イギリス人で、元ゴールドマンサックスのアナリストで、現在 国宝・重要文化財補修を手掛ける小西美術工藝社の社長による日本への提言。

 

前半は、人口減少少子高齢化社会を迎えつつあるので、生き残り策として観光立国化を推進すべきだという話し。

 

現在の文化保護というのが、イコール建築物保護といってもいい現状。

観光客にその建物がどういう文化の元でどういう使われ方をしていたのかみたいな視点が欠けている。

それは、観光資源でお金を稼ごう、そのお金で文化を保全しようという考えがないからだと指摘。

日本の文化財見学って海外からつまらないと思われているんだって。

なぜなら、ただ建築物を通路に沿ってみせるだけで、どういう使われ方をしてとか実演もなければ、説明もなく、これは茶室です。豊臣秀吉がつかってましたみたいな情報しかないから。

そして禁止事項が多い。触っちゃダメ、線から入ってはダメとかダメづくし。

建物を保護するって頭ばかり先行して、その背景にある日本文化を観光客に理解してもらって結果文化のすばらしさを知ってもらうという観点に欠けている。

 

80年代までのイギリスが同じだったそうです。

学芸員や、専門家の意見が強く、ただ建物を見せるだけという時代から、財政がひっ迫して観光立国を目指すようになり、イギリス文化を見せる文化財という方向に移っていったそうです。

そういうのは、国民の経済合理性に任せていてはだめで、政府が主導しないとそうならないみたい。

イギリスも経済合理性から古い建物が壊されたりしていたけど、政策転換により強権で古い建物は壊させないで観光資源にしようという流れになった。

 

この話は先日読んだ落合陽一さんの本 2030年の世界地図帳に繋がる話でもあるなと思いながら読んでいました。

 

www.richardh.work

IT分野はアメリカンデジタルに、工業分野はチャイニーズデジタルに抑えられつつある。

そのなかで、ヨーロッパ世界はLVMHをはじめとする、伝統と文化に裏付けされた格式あるブランドでもって製品の価値を高めるという戦略を益々強めるでしょうという予測。

それがヨーロピアンデジタルというイデオロギーだと。

 

そういうブランドはなかなか盗めないものですからね。

日本という国は幸い世界から、歴史や文化が独特であると思われており、まだまだ肯定的なブランドイメージを持たれている。

 

なので、ここで観光立国戦略を打ち立てて、日本という国の文化をもっと世界に発信してゆくことが、あらゆる産業がグローバル市場で生き残ってゆく武器になる可能性を秘めているんですね。

海外の人が日本に来て、日本独特の文化を楽しんで勉強して凄い!て思ったら日本の製品にブランド的価値が付くかもしれないんですよね。

つまり日本全土がディズニーランドになれば、ディズニーブランドのグッズが高く売れる理屈と同じですよね。

安くて高機能という部分ではもう中華製に勝てないかも知れないけれど、ブランド化されたものは価格競争に巻き込まれないという事ですね。

 

後半は、職人文化や後継者不足というところへの苦言ですね。

職人は技術の事だけ考えていればよくて、営業は職人以外がやってくれみたいな考え方とか、聖域化してあぐらをかいている実態を指摘。

あと後継者がいない問題ではなくて、寿命が延びたため、職人が高齢化して若い人の為に席を空けない問題の方が大きいと。

職人のリクルート活動も積極的にやっているとは言えないって。

文化だから、保護しなければならないからと、補助金に頼ろうとする考え方があらゆる産業で蔓延していると。

 

呉服産業の衰退の話、他のあらゆる産業に通じるような話。

売れなくなるから、高単価にする。

高単価にするから売れなくなる。

更に利益を上げようと、価格を高価なまま生産工程の一部を外国産にして粗悪にする、ますます目の肥えたお客も離れるみたいな話。

 

オーディオやカメラなどあらゆる産業で起こっている現象と同じ話でした。

京都でバカ高い値段で売っている漆器とかも殆ど中国産漆を使っていて、酷いところだと塗る行程まで中国に出していると。

それならそれで安く出して高価なものは純日本製にするならいいけれど、これではまるで産地偽装と同じ実態だと。

金沢の金箔も同じ事情らしい。

 

そういう事は、めぐりめぐるとブランド力を無くし、やがて産業自体の衰退を招くことになると警鐘している。

 

読み終えて思ったのが、日本人が、日本文化をもっと意識的に愛すようにならんとダメですね。

そして起業も製品ラインナップの中に値段はいくらになってもいいので、フラグシップは純日本製というものを用意した方が、長期的には企業価値を高めるのかも知れません。

誕生日にルイビトンのバッグをおねだりしないで伝統工芸品が欲しいわって言うようになり、それがメルカリとか通じて現物資産として流通するような日本になると、あらゆる産業で後塵を拝している日本が復活する道筋になるのかも知れませんね。

 

元外国人アナリストかつ、日本の伝統工芸の最前線社長でかつ、日本が好きでたまらない著者だからこそできた鋭い指摘の本だと思います。

沢山の人に読まれて欲しいです。

 

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国宝消滅

国宝消滅