
先日、富士山に登ってきました。
20年ぶりの富士山。前回は須走ルートで、山頂に着いた頃には動けなくなるほどヘトヘト。今回はお鉢めぐりをする体力を残して行動できました。景色は本当に綺麗で、心から楽しい山行でした。
ただ、その道中で「装備の大切さ」を思い知る出来事がありました。今日はその話も含めて、富士山に持っていくべき装備を書きます。
特にヘルメットについて。ここだけは強く言わせてください。
1. ヘルメット ── これだけは絶対に
9.5合目付近で見た光景
山頂手前、9.5合目から上のあたりでのことです。
下山してくる方が足を滑らせて転倒しました。頭を強打して、そのまま動かなくなってしまった。周囲にいた登山者が集まって救助活動が始まり、僕も山小屋のスタッフの方に救助要請をするよう声をかけました。
一瞬の出来事でした。特別に危険な場所でもなければ、その方が無謀な歩き方をしていたわけでもない。ただ、滑っただけです。
転倒は「いつでも」「誰にでも」起こる
これが今回いちばん伝えたいことです。
転倒に「ここは大丈夫」という場所はありません。疲労が溜まった下山時、浮き石を踏んだ瞬間、すれ違いでバランスを崩したとき ── どんなに経験を積んでいても起こるときは起こります。
そして頭は、守られていなければ一撃で終わる部位です。
僕はこの一件以来というより、もともとどんな低山でもヘルメットを被るようにしています。今回のことで、その判断は間違っていなかったと改めて思いました。
そして、救護に参加した人の山行も妨げられます。自分一人で閉じないトラブルなので、装備で防げるなら備えたほうが絶対いいです。
富士山は特に転びやすい山
富士山は転倒リスクが高い山です。理由は2つ。
- 滑りやすい砂地・火山礫が非常に多い。特に下山道は砂走り状の区間が続き、足を取られやすい
- ゴツゴツと尖った岩場が随所にある。転んだ先が土ではなく岩、という場面が多い
実際、登っている最中に転倒している人を何度も見かけました。「たまたま見た」レベルではなく、「よく見た」という頻度です。
さらに富士山特有の事情として、登山者の密度が高い。人が多いということは、落石が誘発される可能性も、接触や渋滞でバランスを崩す機会も増えるということです。
愛用しているのは Petzl
僕が使っているのは Petzl のヘルメット。
決して安くはありません。でも、
- コンパクトで、ザックの外付けでも邪魔になりにくい
- 軽い割に強度がしっかりしていて、被っていて安心感がある
- 被り心地が良く、長時間でもストレスが少ない
「重い・蒸れる・かさばる」から敬遠されがちなヘルメットですが、良いものを選べばそのデメリットはかなり小さくなります。被らない理由がなくなる、というのが一番の価値かもしれません。
ヘルメットは、使わずに済めばそれが一番いい装備です。でも必要になった一度で、その後の人生が変わります。
2. 登山靴 ── 富士山では「硬い靴」が正解だった
ヘルメットの次に強調したいのが靴です。
ベアフットシューズか、登山靴か
実は今回、直前まで悩みました。ベアフットシューズで行くか、登山靴で行くか。Gemini にも相談した末、登山靴を選択。
結果、富士山には登山靴が最適でした。
理由はこうです。
- 鋭利な岩場が多く、ソールの薄い靴だと靴自体がボロボロになる可能性が高い
- 足裏への刺激が延々と続くため、ベアフットやトレランシューズだと足裏を痛めていたと思う
- 砂地が多いので、ハイカットの方が靴の中に砂利が入りにくい。これは快適性に直結します
そしてゲイターがあればさらに最高。砂の侵入をほぼ防げるので、余裕があればぜひ。
SCARPA リベレ HD が素晴らしかった
履いていったのは、もともと雪山用に買った SCARPA リベレ HD。
剛性が高く、岩場でも足裏が全くヘタらない。それでいてキャラバンより軽い。夏の富士山にはオーバースペックかと思いきや、あの岩と砂の組み合わせには見事にハマりました。
決して安い靴ではありませんが、予算が許すならこの価格帯の靴をおすすめします。足のトラブルは山行そのものを台無しにしますし、いい靴はメルカリでのリセールも良いので、実質負担は思ったほど大きくありません。
3. 日除け対策 ── 標高3,000m超の日差しを舐めないで
これは今回、身をもって学びました。
ストールの隙間が焼けました。
標高が上がるほど紫外線は強くなり、遮るものもありません。日差しの強さは平地の比ではないです。
- 強力な日焼け止め(SPF/PA が高いもの、こまめに塗り直す)
- ストール、またはアームカバー
- 帽子 ── ただしヘルメットとの併用を考えるなら、ヘルメットの下に被れる薄手のキャップやバンダナが便利
「隙間」を作らないのがコツです。首の後ろ、耳、手の甲は忘れがち。
4. 防寒着とセパレートタイプの雨具 ── 天候が崩れた瞬間に効く
今回、僕は終始Tシャツで登りました。
ただしこれは「晴天かつ、体を動かし続けていたから」成立した話です。実際、風はかなり強かった。行動中は丁度良い体感でしたが、休憩で止まった瞬間や、天候が崩れたときには全く話が変わります。
- 防寒着(フリース、化繊インサレーションなど)
- セパレートタイプの雨具(上下分かれているもの。ポンチョは強風の富士山では機能しません)
この2つは絶対に必要です。使わずに終わるかもしれない。でも使う事態になったとき、これがないと本当に危険です。富士山の悪天候は、低体温症に直結します。
5. 水 ── 2Lでは足りなかった、でも考え方次第
僕は水を2L持って登りました。結果、下りの後半で尽きて、最後は喉が渇いた状態で下山することに。
ただ、これには考え方が2通りあります。
A. しっかり持っていく 安心ではありますが、水1Lで1kg。重量はダイレクトに足に来ます。
B. 山小屋で買う前提で軽量化する 富士山は山小屋が非常に多いので、これが成立します。500mlで500円くらいが相場。
僕は今なら B 寄りの選択をします。ただし条件があって、小銭を多めに用意しておくこと。山小屋では現金が基本ですし、大きなお札だとお釣りで手間をかけることになります。
6. トレッキングポール ── 疲労感が全然違う
これは「あった方が絶対に楽」なやつです。
特に下り。富士山の下山道は延々と続く砂と礫の斜面で、ここでポールがあるかないかで膝と太ももへのダメージが全く違います。転倒防止という意味でも効果的です。
僕が使っているのは MASTERS RANGER。DABADA よりちょっとだけ高価ですが(それでもお値打ち)、剛性感が明らかに高く、体重を預けたときの安心感が違います。ポールは「たわむ」と一気に信頼できなくなる道具なので、ここもお金をかける価値があると思っています。
行程の話 ── 日帰りは正直ハードです
参考までに、今回の行程を。
- 車中泊 → 4時起床
- 6時登山開始
- 16時下山完了
丸10時間の行動です。お鉢めぐりを含んでいるとはいえ、それなりに時間がかかりました。
20年前の須走ルートでは山頂で動けなくなるほど消耗しましたが、今回はお鉢めぐりをする余力を残して行動できました。それでも下山する頃には、もう足が出ないくらいヘトヘトでしたが。
時間的余裕があるなら、山小屋泊にした方が確実に楽です。 日帰りは体力的にかなりハードだと思ってください。高度順応の意味でも、小屋泊には大きなメリットがあります。
まとめ ── 富士山必携装備リスト
| 装備 | 優先度 | ひとこと |
|---|---|---|
| ヘルメット | ★★★ | これだけは絶対。転倒は誰にでも起こる |
| 登山靴(ハイカット) | ★★★ | 岩と砂の富士山には硬い靴が最適解 |
| 防寒着 | ★★★ | 天候が崩れた瞬間に生死を分ける |
| セパレート雨具 | ★★★ | ポンチョは不可。上下分かれたものを |
| 日焼け止め・アームカバー | ★★☆ | 隙間を作らない。標高3,000mの紫外線を舐めない |
| 水(2L or 小屋で購入) | ★★☆ | 買う前提なら小銭を多めに |
| トレッキングポール | ★★☆ | 下りの膝が全く違う |
| ゲイター | ★☆☆ | あれば快適。砂の侵入をほぼ防げる |
富士山は、日本一の山であると同時に、日本一「軽装で登られてしまう山」でもあると思います。観光地の延長のような雰囲気があって、装備の重要性が見えにくい。
でも実際に登ってみると、滑りやすい砂地、鋭い岩、強い風、容赦ない日差し ── 立派な高山です。
そして9.5合目で見たあの光景。あれが自分だったかもしれないし、あなたかもしれない。
ヘルメットを被ってください。
僕が今回のブログで伝えたいことは、突き詰めればそれだけです。
景色は本当に綺麗でした。安全に登って、無事に帰って、同じ景色を楽しんでもらえたら嬉しいです。
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